ユネスコが認めた山形市の多彩な文化芸術 それを支える山形市民会館 開館50周年

ページ番号1015488  更新日 令和7年1月30日

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 2017年10月に、山形市はユネスコ創造都市ネットワークに加盟認定されました。

 認定の決め手は山形市の文化の多様性。市内には、音楽・演劇の分野のほか、美術、華道、茶道や伝統芸能など先人から受け継がれてきた多彩で豊かな文化があり、市民に根付いています。山形市民会館が、全国の同規模の文化施設と比較して利用率が高く、利用者が年間10万人を超えることからも、山形市の文化の多様性は、市民の皆さんの盛んな文化芸術活動が形づくっているといえます。

 今号では、市民の文化芸術活動の拠点である山形市民会館が担っている役割や取り組みなどを紹介します。

文学祭の様子

平和劇場の様子

市民美術展の様子

芸術祭開幕公演

合唱団じゃがいも

市民会館の催しの様子

芸文総合展

市民会館の催しの様子

文学祭

みちのく阿波踊り

「文化は良い時にだけ享受するぜいたく品ではない」

 これは2020年のコロナ禍、ドイツ連邦政府のグリュッタース文化メディア国務大臣が述べた言葉です。感染拡大を防ぐため、発表会やコンサートなどの文化イベントの多くが中止となる中で、同国務大臣は「アーティストは今、生きるために必要不可欠な存在だ」とも述べています。

 ドイツのメルケル首相も「文化的イベントは、私たちにとってこの上なく重要なものです」「私たちは(文化芸術によって)過去をよりよく理解し、また全く新しい眼差しで未来へ目を向けることもできるのです」と訴えました。

 世界的に文化芸術活動の必要性が注目されています。

文化を産業に生かす

 ユネスコは創造都市を、その都市が持つ創造性と文化による産業振興の可能性を最大限に発揮させ、文化の多様性を保持しながら持続的に発展することを目指す都市と定義しています。その都市の文化を保存や活用にとどまらず、創造性を含めて産業振興に生かすことで、その都市自体の持続的発展につなげることを目指している点が特徴です。

 山形市は、ユネスコから文化の多様性と、それらを産業振興に生かすポテンシャルが評価されたともいえます。

 文化を産業に生かすことは世界的な流れであり、2021年のG20文化大臣会合では、「文化は経済復興の主要なエンジンである」と宣言。日本においても、2022年に経済産業省が文化経済政策を打ち出し、「アートと経済社会について考える研究会」を設置しています。

 価値観が多様化している今の時代に求められるのは創造力であり、その源泉となる文化の力が再評価されているといえます。

レールのない時代を生き抜くために必要な創造力

 今、「レールのない時代」といわれており、自分の生きる道を自分自身で考え、選択していくことが必要です。こうした時代を生き抜くためには、知識だけでなく創造性が求められます。創造性を育むためにさまざまな考えに触れ、あらゆる面から物事を捉える多角的な視点を身に着けることが必要です。

 文化芸術は、理解が難しいと感じることも多いと思いますが、難しいと感じるのは、自分とは違う視点や考えに触れているともいえます。難しいことを理解しようとすること自体が考える力を養うことにもつながり、創造力を養うのに効果的であると考えられています。

幸福度と文化芸術

 文化庁が行った調査では、「文化芸術の直接鑑賞経験のある人や実践などの鑑賞以外の文化芸術活動を行っている人は、行っていない人と比べて幸福度が高く、人生の意義(ユーダイモニア)を頻繁に感じている」という結果が出ています。

※出所:文化庁委託事業「令和3年度 文化に関する世論調査」(分析協力:京都大学こころの未来研究センター)

秋の芸術祭

VivaWomen

民藝展

ライフイズアフェスティバル

開館から50周年を迎えて

市民会館須藤正博館長の写真
市民会館 須藤正博館長

 市民会館が開館50周年を迎えられたのも、これまで市民会館を舞台に活躍されてきた方々や多くの市民の皆さまにご利用いただいたおかげであり、感謝を申し上げます。

 市民会館は、開館当初から事業の方針として文化芸術の向上、地域文化振興の発展の拠点となるように取り組んできました。その当時から50年先を見据えた事業を展開しており、事業の根本である「鑑賞」「参加」「創造」は代々受け継がれて今に至ります。

 私たちはこれまで、文化芸術との出会いを楽しむきっかけをつくり出す「鑑賞」事業や、市民の皆さんが自ら文化芸術活動に「参加」し、仲間と共に1つの作品を作り上げる機会を創出する事業を実施する。そして、皆さまの「創造」的な活動を支えることで、文化芸術の向上・発展に向けた種をまきながら、その輪が広がるように事業を展開してきたといえます。

 また、市民会館は、市内142団体・820個人(2024年4月現在)が加入している山形市芸術文化協会の事務局も担っており、当館で開催される催しのみならず、市内各所で開催されるさまざまな分野の文化芸術活動に寄り添った支援を行っています。

 山形市では、山形市芸術文化協会会員のほかにも、たくさんの方々が文化芸術に興味・関心を持ち、活動されています。市民会館という存在が、文化芸術活動を行う人・鑑賞する人それぞれにとって大きな受け皿となり、人と人とを結びつけ、多様で豊かな山形市の文化芸術活動が花開く基盤をつくっているのだと感じています。

 最後に、50年の節目は、単なる通過点ではなく新しい出発点として、これまで以上に文化芸術の拠点として愛される施設を目指してまいります。

市民会館 須藤 正博 館長

市民会館の取り組みの中から3つの事業を紹介します

市民会館企画事業担当 山﨑 大輔さんの写真
市民会館企画事業担当 山﨑 大輔さん

子どもたちに文化芸術との出会いを 演劇鑑賞教室・音楽鑑賞教室

 市民会館では開館当初から、劇場ならではの照明や音響効果もある生の舞台に触れることで、子どもたちの感性を育てる機会をつくるべく、演劇鑑賞教室と音楽鑑賞教室を毎年交互に実施しています。市内全ての小・中学生が大ホールで鑑賞できるまちは珍しく、山形市の特徴的な事業といえます。

 長く継続してきた事業ですが、コロナ禍で一時中断。久しぶりに音楽教室を開いた際の子どもたちの笑顔は忘れられません。

 今では、演劇教室と音楽教室で舞台に触れた皆さんが、音楽や演劇に興味を持って、さまざまな形や立場で舞台芸術に関わっていらっしゃいます。

 これからも、文化芸術の楽しさをお届けするとともに、鑑賞教室があるまちで育ったことを子どもたちに誇りに思ってもらえるように努めたいと思います。

劇団芸優座の公演
劇団芸優座
山形交響楽団の演奏会
山形交響楽団

児童の創造性を育てる児童劇団

 小学3年生~6年生を対象とした児童劇団は、演劇活動をとおして、子どもの豊かな心と表現力を養い、個性的に創造的に活動を展開することで、総合的な児童文化の向上と芸術愛好者の裾野の拡大を目指しています。

 山形市児童劇団は、昭和50年4月に全国に先駆けて公設の児童劇団として誕生し、今年で50周年を迎えました。これまでの卒団生は700人以上に上ります。

 2月23日には、山形市児童劇団第50回公演を開催します。詳しくは、P.14へ。

山形市児童劇団第49回公演
山形市児童劇団第49回公演の様子

 役の思いや背景を考え、セリフや動作で工夫しながら表現している娘の姿を見て、自分で考えて行動する力が身に付いたなと感じています。熱心な指導を受け、プロも使用する舞台で本格的に演劇ができるのは、娘にとってとても貴重な経験になっています。
米澤 勇真さん

 お話の中に入り込んで、自分で考えながら役作りをするのは、とても面白いです。児童劇団に入って、大好きな先輩や先生、友達に出会えましたし、舞台に立つ楽しさも知ることができました。
 2月23日の公演では、個性豊かな精霊さんたちが登場する「灯りの森の夜」で、内気で自信のない灯りの精霊・モルルを演じます。みんなで最高の状態でお届けできるように頑張ります。ぜひ見に来てください。
米澤 小春さん(現役児童劇団員)

米澤勇真さんと小春さん
(左)米澤勇真さん(右)小春さん

市民がつくる 市民参加の山形市民合同音楽祭

 今年度68回を迎えた歴史あるこの音楽祭は、市民がつくる市民参加の音楽祭として市民会館の開館前から開催されており、現在は市民合同音楽祭実行委員会と協力しながら実施しています。

 「小・中学校の部」「一般の部」の2つの演奏会からなり、「一般の部」は出演者を公募し、市内の吹奏楽団や合唱団、山形フィルハーモニー交響楽団のメンバーなど、たくさんの方が参加しています。参加者が合同でステージをつくり上げることで、オーケストラや吹奏楽と合唱がコラボレーションした大きな作品ができるとともに、市民の文化芸術活動の輪を広げる機会にもつながっています。

山形市民合同音楽祭

市民会館の利用者に聞きました

市民会館のサポートがあるからこそ挑戦できる

市民合同音楽祭実行委員長 鈴木 義孝さん
市民合同音楽祭実行委員長
鈴木 義孝さん

 私が実行委員長を務める市民合同音楽祭は、市民会館の方が一緒に運営してくれるからこそ、たくさんの文化団体の協力を得て、それぞれが持つ力を掛け合わせた1つの大きな舞台を作り出すことができています。市民の力でオーケストラと合唱がコラボレーションした舞台を作れるまちは、全国的に見てもほかにありません。

 市民合同音楽祭は、参加者にとって仲間づくりの場になるだけでなく、刺激を受け日々の活動に対する気づきを得る場にもなっています。こうして互いに切磋琢磨できることで、山形市に文化芸術活動が根付き、発展しているのだと思います。

市民合同音楽祭

演劇って楽しい

 私たちは本年度、東北地区高等学校演劇発表会で優秀賞をいただきました。地区大会予選の会場は山形市民会館でした。
 小学生のころ、演劇鑑賞教室が毎回楽しみでワクワクしながら鑑賞していた私が、高校で演劇部に入り、キャストとして初めて舞台に立って演劇の楽しさを感じた場所も市民会館でした。(田中さん)

 私は児童劇団に入って演劇の楽しさを知り、卒団後も演劇を続けられるようにと、市民会館の方から地域の劇団を紹介してもらえたおかげで演劇を続けられています。演劇は、自分たちで自由に世界観を創り上げることができるので、行きたいところに行ける面白さが魅力です。(大沼さん)

山形中央高校演劇部 田中 姫花さん、大沼 環愛さんの写真
山形中央高校演劇部
(左)田中 姫花さん(右)大沼 環愛さん

山形中央高校

山形中央高校

身近に市民会館があってよかった

 私たちは普段、西田にあるダンススクールで活動を行い、年に一度、集大成として大ホールで発表会を開催しています。発表会を開催するために必要な準備を、市民会館の方に親身に相談に乗っていただいています。おかげさまで昨年の発表会はついに会場が満員に。活動を発表できる舞台があり、自分のやりたいことの実現に向けてサポートしてくれるスタッフがいる、みんなに親しまれてる市民会館だからこそたくさんの方に足を運んでもらい楽しんでいただけるのだと思います。

ダンススタジオブリリアン 代表 笹原 竜馬さんの写真
ダンススタジオブリリアン
代表 笹原 竜馬さん

ダンススタジオブリリアン

ダンススタジオブリリアン

創造性やにぎわいを育む新市民会館

 新市民会館のコンセプトは「BIG-TREE」。多様な関わりしろを生み出す1本の大樹をイメージし、幹となるホール、枝となるさまざまなプログラム、葉となる市民の文化芸術活動など、多岐にわたる活動の生態系が生まれ、市民の創造性やにぎわいを育む場になるようにとの思いが込められています。

 新市民会館は、ホールでのイベントが行われていない時でも、誰もが気軽に立ち寄れるような工夫も盛り込む予定です。新市民会館で多岐にわたる文化芸術活動を通して自分と違うものの見方に接し、主体的に考える力も育む施設にしていきたいと考えています。

新市民会館のイメージパース

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