「観光」の力で拓く 持続可能なまちづくり

ページ番号1017587  更新日 令和7年12月23日

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「観光」の力で拓く 持続可能なまちづくり

 山形市が世界の舞台に躍り出ました。2025年10月、米有力旅行メディア「ナショナル ジオグラフィック」が「2026年に行くべき世界の旅行先25選」の一つに日本で唯一、山形県を選出。同時期、英字新聞社「ジャパンタイムズ」も「世界に発信するに値する日本の自治体」第一号として山形市を選定しました。

 これらの吉報を受けて、これから山形市が観光都市の確立に向けて、どのようなまちづくりを行っていくのか、佐藤市長のインタビューをお届けします。

市長の写真

市長の写真

山寺の風景
宝珠山 立石寺
日本一の芋煮会の様子
日本一の芋煮会フェスティバル
q1外観
Q1外観

世界が選んだ山形の魅力

 2025年10月、山形市にとって大きな出来事が重なりました。世界的に知られる2つのメディアが、山形の魅力を大きく発信してくれたのです。

 ナショナルジオグラフィックは世界170を超える国と地域で購読されているビジュアルマガジンです。今回、「2026年に行くべき世界の旅行先25選」に選出されたことで、世界中の読者に山形の魅力が伝えられました。山形県は、訪日外国人が落ち着いた環境で自然や文化、食を楽しめる場所として高く評価されました。

 一方、ジャパンタイムズは山形市の文化創造都市としての取り組みに着目しています。10月に行われた「山形国際ドキュメンタリー映画祭」や、東北芸術工科大学と連携した「やまがたクリエイティブシティセンターQ1」をはじめとする古き良き建物を生かしながらまち全体の活性化につなげる活動などが認められました。

 私は、山形市のまちづくりの2大ビジョンの一つに「文化創造都市」を掲げてきました。これまで山形市を訪れるインバウンドはアジア圏が中心でしたが、今回のメディア露出を機に、より多くの国と地域からお客さまが山形市を訪れるでしょう。これを追い風に、国内外の多くの方々に文化創造都市・山形市の魅力に触れていただけるよう、食や歴史、文化などの地域資源を活用するとともに、さらに観光振興に力を入れていきます。
 

映画祭の写真
山形国際ドキュメンタリー映画祭2025

観光都市・山形の現在

 10年前、私が市長に就任したころから、徐々にインバウンドが増え始めましたが、観光政策をさらに前に進めようとしていた矢先、コロナ禍が訪れました。観光客数は一時大幅に落ち込みましたが、回復は予想以上に早く、インバウンドにおいてはコロナ禍前を超える来訪者数を記録※1しました。特に冬の蔵王は、外国からのお客さまが大幅に増え、山形市の魅力が世界に認知され始めた証しだと受け止めています。

 ただ、山形市が観光地として次のステージに進むためには、それぞれの観光地が単独で脚光を浴びるだけでなく、つながりを持って市全体の魅力を高めていく必要があります。

 これまで山形市の観光は、蔵王と山寺という二大観光地を柱にしてきました。これからは、ここに「中心市街地(まちなか)」を加え、三つのエリアをしっかりと連携させ、それぞれを行き来しながら楽しめる仕組みづくりをさらに強化していきます。蔵王を訪れた方が山寺にも足を延ばし、市街地でも一日楽しんでいただくーーそうすることで、山形市全体の魅力が増幅し、より多くの方に「また山形市に来たい」と思っていただけるはずです。

外国人観光客数の推移

蔵王──四季を通じた魅力の発信

 蔵王は冬の樹氷とスキーを目当てに多くのお客さまにお越しいただいていますが、冬以外の誘客が課題です。しかし、春は桜、夏はトレッキングや避暑、秋は紅葉と、それぞれの季節に魅力があります。お釜をはじめ、蔵王は夏も十分に楽しんでいただける場所です。サマースキージャンプ大会やトライアスロンなど、各種スポーツイベントも組み合わせながら、冬以外の蔵王の魅力を広くアピールしていきます。

 蔵王の大きな強みは、中心市街地から車で30~40分という近さです。これほどの山岳リゾートが市街地と好アクセスの場所にあるという環境は、国内にもなかなかありません。「蔵王温泉の宿泊客が、夜は市街地に降りて食事を楽しみ、また宿に戻る」という楽しみ方をしているインバウンドの方もいるほどです。立地の強みを生かした取り組みを一層強化していきます。

蔵王の様子
蔵王

山寺──精神文化が息づくパワースポット

 山寺にも年間を通して多くの方々が訪れています。

 現在、山寺を景観重点地区に指定し、地区全体の魅力向上に取り組んでいます。建物改修の補助制度を活用し、屋根や壁、看板の色を統一するとともに無電柱化も進めており、街並みに一体感を生み出しています。さらに地域の子どもたちが、授業で観光ガイドに取り組むなど、地域と観光が一体となった取り組みも進んでいます。

 山寺の魅力は、景観だけではありません。山岳信仰や仏教の精神性、スピリチュアルな価値、歴史が国内外から高く評価されています。特に欧米の方々は、こうした精神文化や長い歴史に強い関心を持たれますので、デジタル技術も活用しながら、外国の方にも深く理解していただける仕組みを整えたいと考えています。また、すでに蔵王温泉と山寺を結ぶシャトルバスも運行を始めていますが、こうした連携をさらに強化していきます。

垂水遺跡の写真
垂水遺跡

まちなか──現代へと続く歴史を体感できるまち

 戦火を免れた山形市には江戸から昭和にかけて建てられたさまざまな建物が残っており、重層的な歴史を楽しめるなど、まちなかは観光地として多くの魅力があります。

 そして今、市街地は大きく変貌を遂げようとしています。まず、駅前の旧山形ビブレエリアまで含めた一帯で「日本一の観光案内所」を整備する計画です。市街地はもちろん、蔵王、山寺、周辺地域の観光情報まで、観光客一人一人のニーズに合わせて丁寧にご案内する旅の拠点にしたいと考えています。

 もう一つの大きな施策が「粋七エリア整備事業」です。「水の町屋 七日町御殿堰」の上流部分を石積みに復元し、堰沿いに小径や広場、お店を配置していきます。その先にある旧料亭千歳館は、現在リノベーション中です。重厚な雰囲気は生かしつつ、芸妓文化・料亭文化に触れることができる場所に生まれ変わらせます。カフェや宿泊機能も備え、まちなか観光の核となる施設にします。これらが完成すれば、市街地観光の大きな目玉になります。

 また、既存の観光資源も磨き上げを行っています。文翔館や山形市郷土館(旧済生館本館)も、PRに力を入れることで来場者数が大きく伸びています。城下町ならではの酒蔵、旧家、和菓子店なども、ストーリーとともに発信することで、より魅力的な観光コンテンツとして生かしたいと思います。

旧大沼・済生館エリアイメージパース令和5年12月時点のイメージ※検討の進捗に合わせて変更となります。
旧大沼・済生館エリアのイメージパース
新市民会館の写真
新市民会館イメージパース
旧済生館本館の写真
旧済生館本館
旧千歳館エリア・リノベーション外観パースの写真
旧千歳館エリア・リノベーション外観パース
粋七エリア整備事業イメージパースの写真
粋七エリア整備事業イメージパース
q1外観の写真
やまがたクリエイティブシティセンターQ1

美食都市としての可能性

 山形市は米どころであり、酒どころでもあります。また、四季折々のフルーツ、そばやラーメン、山形牛もあります。これらを総合して「美食都市」としてのイメージを確立することが重要です。

 すでに全国的には「山形はおいしい」という認識が広がっています。ガストロノミーガイド「ゴ・エ・ミヨ 日本版」には、山形市の飲食店が3年連続で複数掲載され、食体験を目当てに訪れる方も増えています。こうした食の魅力も、観光の大きな柱にしていきたいと考えています。

 一方で、山形市民が暮らしの中で楽しんでいる芋煮会のような食文化も、そのまま観光資源になります。山形市の食の可能性を広く捉え、本当に良いものを紹介していきたいです。

 

高付加価値観光という新しい視点

 私が今、注力したいと考えているのが「高付加価値観光」です。単なる観光にとどまらず、教養的な要素を含んだ山形市独自の質の高い体験を提供していきたいと考えています。

 海外の富裕層、特に経営者は、旅先でも常に学びを求めています。彼らは山形市に根差した歴史あるものと、継続することの知恵に価値を感じてくれるでしょう。

 例えば山形県は、京都府に次いで老舗企業の割合が高いというデータがあります※2。実際、市内においても100年、200年、300年と続く企業が数多く存在します。なぜこれほど長く続くのか。その秘訣には、経営者の方々が求める学びのヒントが詰まっています。

※2:帝国データバンク「山形県『老舗企業』分析調査(2024年)」より

 他にも、山寺には千年以上消えることなくともり続ける「不滅の法灯」がありますし、平安後期から続く山形鋳物などの伝統工芸があります。山形市に根付く「続ける」ことの価値をストーリーとともに深く伝えていく。それが山形市ならではの観光体験になるはずです。

 食においても同様です。蔵王かぼちゃ、赤根ほうれん草、悪戸芋など、山形市には種を大切に守り、育ててきた伝統野菜が数多くあります。ただおいしい料理を出すのではなく、その背景にある自然環境や、種を守り続けてきた人々の歴史まで含めて語る。このような奥行きのある体験こそが、私が目指す高付加価値観光の神髄です。

持続可能な観光都市を目指して

 山形市が観光地としての魅力を高めていくためには、行政だけでなく、民間や地域との連携も欠かせません。山形市では、山形県内初の観光地域づくり法人「おもてなし山形」や村山地域の七市七町※3から成る「DMOさくらんぼ山形」、そして県とも緊密に連携しながら、観光コンテンツの開発を進めています。地域の観光資源を商品化し、訪れる方々に楽しんでいただき、しっかりと消費していただく。そうした一連の流れを周辺自治体や関係機関と協力しながらつくり上げていくことが、持続可能な観光地づくりの基盤になると考えています。

※3:山形市・寒河江市・上山市・村山市・天童市・東根市・尾花沢市・山辺町・中山町・河北町・西川町・朝日町・大江町・大石田町

 オーバーツーリズムへの対応についても、改善を続けています。蔵王ロープウェイの混雑問題については、事前予約システムの導入やそり専用スペースの造成、空き家を活用した飲食店などの受け入れ環境の整備を通して、改善が進んでいます。

 山形市は京都や大阪といった大規模観光都市とは異なり、大量の観光客が一度に押し寄せると、十分に対応できない面があります。だからこそ、ターゲットを明確にした高付加価値観光に力を入れたいと考えています。現在、宿泊税の導入も検討しています。こうした財源も活用しながら、観光客の受け入れ環境を整備し、持続可能な観光都市づくりを進めていきます。

 

観光と暮らしをつなぐ

 山形市が持続可能なまちであり続けるためには、経済の活性化が必要不可欠です。その中で、観光は非常に大きな伸びしろを持っています。しっかりと観光客を受け入れ、消費していただき、税収を上げ、それを市民の皆さんに還元していく。そうしたサイクルをつくっていきたいと考えています。

 そして、観光客にとって魅力あるまちは、市民にとっても魅力あるまちです。観光客が増えれば公共交通機関の利用が増え、電車やバスの本数が増えるかもしれません。それは市民の皆さんにとってもプラスです。観光と暮らしは別々にあるのではなく、観光が発展することで経済が活性化し、市民生活も豊かになる。そうした好循環を生み出していきたいのです。

 山形市の魅力を世界中の人が求め、訪れてくださることは、私たちにとって大変誇らしいことです。市民の皆さんと一緒に、観光都市・山形の実現に向けて、これからも全力で取り組んでまいります。


[取材・文/山形市副業型地域活性化企業人:佐藤優奈]

山形市が目指す高付加価値観光

従来の観光
見る/食べる/体験する=表層的な楽しみ方

高付加価値観光
知る/学ぶ/触れる=従来の観光を奥行きのある体験へ昇華する
 

知る
文化遺産や在来野菜など
山形市の観光資源の歴史背景 など
 

蔵王かぼちゃの写真
蔵王かぼちゃ
不滅の法灯の写真
不滅の法灯

学ぶ
老舗企業に根付く
伝統継承のノウハウ など
 

山形鋳物の写真
山形鋳物
のし梅の写真
のし梅

触れる
山形市の魅力をつなぐ
市民との交流

新市民会館イメージパースの写真
新市民会館イメージパース
Q1前庭の写真
やまがたクリエイティブシティセンターQ1

市長の写真

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〒990-8540 山形県山形市旅篭町二丁目3番25号
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