【短編エッセイ #14 映画とカフェ/フォーラム&SLOW JAM】
主人公に気持ちが重なって肩で風を切るように歩いた小道、ポップコーンを食べながらあの娘と見つめたスクリーン。だいぶ遠くなったあの頃の気持ちが甦ってくる。
同じ空間の中で、どよめき、笑い、涙する。ほかの誰かと感動を分かち合えるような気がする。だから私は映画館で映画を観るのが好きだ。
「山形では観られないだろうなぁ」と諦めていた作品がちょうどいま上映されていると聞き、はやる気持ちを抑え目指したのは歓楽街のはずれにある緑色の看板。「フォーラム山形」。
映画を愛する有志が集まり、市民からの出資を募って創業した日本初の映画館なのだが、大都市のミニシアターのように劇場の雰囲気に合わせて上映作品を線引きするのではなく、ロードショー系作品でも単館系作品でも、“どれも映画は映画である”という旨で偏りのない上映が特徴的だ。
「たとえばさっきまでフランスのレオス・カラックスの映画を観ていた人が、次に東宝の特撮を観てたりする。そんな線引きをしない映画の楽しみ方を、お客様から気付かされることもあります」と語るのは、現支配人の森合さん。
スタッフ全員がもれなく映画好きというだけあって、私の何気ない質問にも丁寧に答えてくれるから、親近感がわいてくる。知らなかった名作を教えてもらったりして、また来たくなる発見もある。