文化

#12 二年に一度の芸術祭/
山形ビエンナーレ

失いかけた繋がりを再生し、命を治癒する芸術祭

文化

#12 二年に一度の芸術祭/山形ビエンナーレ

失いかけた繋がりを再生し、
命を治癒する芸術祭

Play Video

【短編エッセイ #12 二年に一度の芸術祭/山形ビエンナーレ】 

「みんなが知っているはずの会館や小学校、そして商店街が、今までの印象を覆す場所になっていたのが驚きで…。ビエンナーレは街の見え方やイメージを変えてくれるものなんだね」と、並んで歩く友人が嬉しそうに呟いた。

街とアートとの新しい関わりとは何かを問いながら、多様な芸術作品と活動を発表してきた「山形ビエンナーレ」は、東北芸術工科大学が主体となり2014年から隔年で開かれている芸術祭。

アーティストと対話しながら、趣く感性のままに手を動かして創作する世界にひとつだけのグッズ。モノや人との一期一会に期待が膨らむマルシェは、自分の歩調で気ままに巡る小旅行のよう。目に飛び込んでくる大胆な展示、なのに表面的ではなくじんわりと心象に残るのは時間をかけた手仕事の温もりがあるからだろうか…。音楽や手拍子に合わせて踊るたくさんのカラフルなダンサーたちが“作品そのもの”へと昇華し、周りを囲む観衆とつくりだす一体感。
「文翔館」をはじめ、創造都市やまがたの拠点として地域資産が集まる「やまがたクリエイティブシティセンターQ1」など、街のランドマーク的存在として馴染みのある場所が、アート・音楽・食・ダンスなどでクロスジャンルした作品に包まれ、そこから発せられる活気は、たしかに日常のイメージを覆す光景だ。

山形駅前に歩みを進めると、いつもの見慣れた飲食店街が歩行者天国の美術館に様変わりし、夕暮れの灯りとともに別世界が現れてきた。数千本のロウソク絵画や巨大なチョークアートの中を彷徨い、仮装集団の演劇に見とれ、そして私たち自身が作品に交わることで変化していくデジタルアートに飛び込む。屋外ならではの壮大なアートの中で柔らかな灯りに照らされた人々の表情は、一様に朗らかだった。

あって当たり前と思っていた様々な繋がりが絶たれ、心や命が疲弊したこの時代だからこそ、奇をてらわず、価値観を強いることのない表現や体験のひとつひとつが、じっくりと心に作用してくる。大人も子どもも一緒になって楽しめることや、そこにいる全ての人たちと静かに共有する感動が、いつまでもこの場に居たいという気にさせるのだ。

クリエイティブな力は誰もが磨けて、誰もが共感し合える。そんな気付きを“街なかで体感するアート”は教えてくれた。常識だと思ってきたことや、どうせ○○だから仕方ないという諦めに対して、アートやデザインというのは見方を変えたり視点をずらしたりする役割があるのかもしれないとも。

次回もそのまた次も。この芸術祭が街の明るい兆しを予感させ、この街で暮らす喜びをあらためて見い出せる場に昇華していくのだろう。

二年に一度の芸術祭/
山形ビエンナーレ

住所:山形県山形市上桜田3-4-5 東北芸術工科大学 山形ビエンナーレ事務局
お問合せ先:023-627-2091

その他の文化

Logo_1500_kuro
yamagatashiロゴfooter300
〒990-8540 山形県山形市旅篭町二丁目3番25号 / 代表電話:023-641-1212
開庁時間:月曜日から金曜日の午前8時30分から午後5時15分 (祝日および12月29日から1月3日を除く)

※部署、施設によっては、開庁・開館の日・時間が異なるところがありますので、事前にご確認ください。
〒990-8540 山形県山形市旅篭町二丁目3番25号
代表電話:023-641-1212
開庁時間:月曜日から金曜日の午前8時30分から午後5時15分(祝日および12月29日から1月3日を除く)

※部署、施設によっては、開庁・開館の日・時間が異なるところがありますので、事前にご確認ください。
Copyright © Yamagata City All rights Reserved.