【短編エッセイ #13 自然とつながる暮らし/アウトドアキャンプ】
緑葉と紅葉のグラデーションに染まる山々が里を抱く。小春日和の馬見ヶ崎川には、河畔に点在するカマドから「芋煮会」の煙が立ち昇り、和やかな談笑が欄干の向こうから聞こえてくる。街なかから扇状地の突端にある緑地まで車でわずか数分。風を感じ、川の飛沫や鳥たちの声に耳を澄ますと、鈍っている五感が澄んでくるようだ。
柿色の風景に馴染むサンドベージュのクロスカントリー車がゆっくりと枝道を降りて来た。「迷ってるくらいなら椅子でも机でも持ってくればいい」という感で、普段の生活でも愛用しているという道具がぎっしりと積んである。「今日はどんな設営にしようか」と楽しげにラゲッジを開けキャンプ道具を取り出すのは、山形市にUターンして6年になる高橋さん夫妻だ。
「自分たちが好きな風景やモノに囲まれて過ごしたい。それは家も外も変わらないのかも」と話す二人。手際良くテントを張って薪を割り、のんびりと会話をしながら火をおこす様子を見ていると、アウトドアは特別に気を張って行くものではなく、むしろ暮らしの延長線上にあるよう。
小さな種火を育てた焚き火はしだいに真っ赤な芯となり、熾火(おきび)に変わってきた。じんわりと発せられる熱でシンプルに調理し、山の空気と一緒に体に入る料理は、目を丸くするほどに美味しかった。