目を引くのは、柱や内外装まで地場産の杉を使った開放的な吹き抜け空間。厚みを増した断熱材のおかげで、家全体の暖は、たとえ冬でも朝夕に焚く薪ストーブでほぼまかなえているという。また、輻射による風がないため乾燥もせず、床から天井まで室内は均一な暖かみに包まれている。先の“快適”の意味をいち早く実感したのは、ほかでもない私の肌だった。
「ポイントは省エネと再生可能エネルギーです。大開口窓であっても、断熱性能の高い壁とトリプルガラスの木製サッシは、寒さ暑さを和らげてくれ、四季を無理なくすごせます。ちなみにわが家では、一般的な省エネ基準程度の家に住んでいた頃と比べ、暖房にかかるコストが3分の1になりました」
さらに、太陽光発電パネルや太陽熱温水器、都市ガス高効率給湯器、薪ストーブといった、再生可能エネルギーや木質バイオマスエネルギーを利用する設備で「ゼロエネルギー」を実現しているが、じつはここまでの設備がなくても、住宅の断熱性を高めるだけで、快適なエコハウスは実現できると三浦さんは語る。
いまの技術を取り入れつつ、自然に立ち返る暮らしをほんの少し引き戻した住まいづくり。先人が育んだ身近な森林資源への着目と木をエネルギーとする暮らしは、これからの普及型住宅の指針になるのかもしれない。
そしてなによりも、何気ない季節の移り変わりに潜む自然からの示唆をゆっくりと消化できる家は、きっとその人と周囲を多幸感で満たしてくれるのではないだろうか。