自然

#09 出塩文殊堂/あじさい寺

和尚の心模様を咲かせた、あじさいの坂。

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#09 出塩文殊堂/あじさい寺

和尚の心模様を咲かせた、
あじさいの坂。

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【短編エッセイ #09 出塩文殊堂/あじさい寺】

梅雨時とは思えないジリジリとした陽射しと盆地ならではの蒸し暑さから逃れるように、山のふところへ。弘法大師(空海)が神通力で塩の泉を湧き出させ、村を潤したという伝説が残る村木沢地区の古寺、通称あじさい寺と呼ばれる出塩文殊堂は、ちょうど「あじさい祭り」の最中であった。
山間のくぼみを抜け、車を降りるとすぐにたくさんの花に囲まれ、平地の暑さなど忘れてしまうほどに、心地のよい湿気と清涼感が辺りを包み込む。
参道入口にある石鳥居をくぐると、ほどなくあじさいが咲きほこる石段が目の前に伸びる。ここが文珠堂と良向寺がある「あじさい参道」入り口だ。石段を登り進んでいくと両脇には、花に隠れるように苔むした石仏があちこちに佇んでいる。

ひと月限りのあじさいの見頃に合わせ、当地にはたくさんの人が訪れていた。年配者ばかりではなく、どちらかといえば、幼い子を連れた家族や若い男女が手をつないで歩く姿が目立つ。カメラを携えて写真を撮る人も少なくない。
石段の中頃から上は、とくに竹林や木立に守られ、すこしずつ時期を遅らせながら咲いていて、それだけ見頃が長いともいえる。
参道に被さるほどの見事なあじさいは頭をかしげて話しかけてくるようで、ところどころで参拝者の足をとどめている。ともあれ、みなそれぞれの歩調でゆったりと愛でていた。

 ふと振り返ると、木立の間から山形の市街地が蜃気楼のように揺らめいて見えた。辺りから聞こえる鳥や虫の鳴き声が、いっそう穴場的な感覚をふくらませる。
 ところどころ足元が不安定なため、休まずに歩いていたがさすがに足取りが重くなる。そこにちょうどお不動様が祀られている水場があり、冷たい清水で喉を潤した。

 そろそろ文殊堂が見えてこようかという頃、石段から伸びる小径の先には、互いに支え合うようにそびえ立つ2本の大杉があった。夫婦和合や縁結びの象徴として古くからご利益があるとされる「夫婦杉」だ。

 杉の前で写真を撮っている老夫婦と会話を交わす。なんでも20年以上前から、毎年この時期に参拝に来ているという。以前は、あじさいを植えた良向寺の先代住職が祭りの時期になると決まって礼堂におられ、坂の下から登ってくる人たちを見守っていたという。
「家族みんなで文殊様にお参りをしたあと住職に挨拶をしてお守りをいただいて、また次の年の見頃に来るのが恒例だったんですよ」

 息を切らしながら石段を登りきった先では、丸々と花をつけたあじさいが御堂を囲むように清閑に咲きほこる。
「よくお越しくださいました」と礼堂でお守りを授けてくれた若い住職の笑顔に、先代住職の面影が重なり浮かんでくるようだ。

出塩文殊堂/あじさい寺

住所:山形県山形市村木沢6048
お問合せ先: 023-643-2747(良向寺)
       023-643-2050(あじさい交流館)
アクセス:【車】JR山形駅より車で約30分/東北中央自動車道 山形中央ICより約15分

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〒990-8540 山形県山形市旅篭町二丁目3番25号 / 代表電話:023-641-1212
開庁時間:月曜日から金曜日の午前8時30分から午後5時15分 (祝日および12月29日から1月3日を除く)

※部署、施設によっては、開庁・開館の日・時間が異なるところがありますので、事前にご確認ください。
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