自然

#01 千歳山

足元で移ろう街なみ、わたしの座標を見渡せる場所。

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#01 千歳山

足元で移ろう街なみ、
わたしの座標を見渡せる場所。

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【短編エッセイ #01 千歳山】 

 時間に頓着しない朝。時計に急かされることもなく、熱いコーヒーをタンブラーに注ぎ、小さなバックパックに荷物を詰め込む。
 道すがらにみえてきたのは、逆光に照らされる山のシルエット。街のすべてを見渡すような雄々しさは、まるで山のほうからこちらに迫ってくるみたい。

 人間に姿を変えた松の精と阿古耶姫との悲恋がつたわる千歳山は、もとは修験道の聖地としてあがめられた信仰の山。きけば、平安時代に建てられたという日本最古の「元木の石鳥居」も、この山を向いているとか。

 朱の鳥居がつらなる石段から、山と街とのあいだにある結界のような山門をくぐる。ふと見上げると、目の前はたくさんの芽吹きの色にあふれていた。いつ訪れても「山ってこんなに色があったんだ」という当たり前に気付かされる。そして「きれい」と呟いてしまう。

 石段を登り終えると、ヒガラやシジュウカラのさえずりとともに、中腹にある稲荷神社から伸びやかな祝詞がまじわってきた。
 風に揺れ手招きする赤いガマズミに誘われたその先は、ふいに山道らしい様相に変わりはじめる。ほどなく「こんにちは」「いい日和ですね」と、道ゆく登山者が声をかけてきてくれた。もしかしたら、わたしが住むこの街でいちばんあいさつが交わされる場所はここなのかもしれない。

 木々のあいだから目に映る景色が段々と非日常的になると、いよいよ神社の本宮である霊びな巨石の室が姿をあらわす。気持ちの高まりからか、不思議と足取りは軽くなった。

 額にじんわりと汗が滲んでくるころに見えてきた山頂の展望台からは、充実を含んだはずむ笑い声が聞こえてくる。
 口を尖らせながら熱いコーヒーをすすりひと息つくと、途端に足元に迫ってきた眼下の眺めに「うわっ」と声がもれた。

 うつりゆく景色をただじっと見渡しているときの気持ちは、誰かに心情を打ち明けたそれにも似ていると思う。自分の立ち位置はいったいどこにあるのか、本当にやりたいことは何なのか。千歳変わらない緩やかな時のながれは、いつも私の座標を原点に戻してくれるよう。
 山と街とのあいだ。山形には山形の、緑と人との関係がある。

千歳山

住所:山形県山形市平清水
アクセス:【車】 JR山形駅から千歳稲荷神社参道口まで約10分。【バス】 JR山形駅前より「K10 県庁前/県庁北口」行きのバスに乗車(約9分)、「附属学校前」バス停下車。千歳稲荷神社参道口まで徒歩約6分。
駐車場:あり(12台)稲荷神社参道口西側
*山頂まで約1時間(登り口は他にも複数あります)

 

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〒990-8540 山形県山形市旅篭町二丁目3番25号 / 代表電話:023-641-1212
開庁時間:月曜日から金曜日の午前8時30分から午後5時15分 (祝日および12月29日から1月3日を除く)

※部署、施設によっては、開庁・開館の日・時間が異なるところがありますので、事前にご確認ください。
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