ささやかな願いごとと一緒に小銭をそっと賽銭箱へすべらせて、出口となる楼門へ。振り返ると、池の向こう側では大きなイモムシのような窯があんぐりと口をあけていた。
寺に隣接する七右エ門窯の店頭では、かつて初市で親しまれたという陶器の平清水だるまが、棚の上からじっとこちらを見おろしている。目うつりするほどの器が並び、“イモムシ窯”で焼かれた自然釉も好きな風合い。どれにしようかなぁ。
と、「いつでも陶芸体験ができますよ」のふいなひと言。器に見入っていたさなかの更なるトキメキに、ふたり顔を見合わせた。
すぐそばを小川が流れる教室で、二百年の伝統と技をぐっと凝縮したひとときの作陶。でも敷居は高くない。自分が思うままのカタチを、手回しろくろや手びねりで生んでいくだけ。休日まで取っておいたたくさんの“つもるハナシ”は、思いがけず湧いてきた集中力にみんな回収されてしまった。
「思うようにフチが整わない..」といった焦りも、「歪みや凹み、それも全部味わいになりますよ」のひと言で腑におちたから良しとしよう。
まち侘びたひと月半後の焼き上がり。気になっていた歪みが逆にしっくりと手に馴染んでくる。これに、どんな料理を盛ろうかな。手のかけられたものが、こんなにも想像力を膨らませてくれるなんて。