【短編エッセイ #11 和太鼓の継承/太悳】
腕っぷしだけではない。四肢の躍動とともに空間を震わせる音と多彩なリズム。掛け声を瞬発力にして仲間との同調が生まれ、一気に押し寄せてくる躍動感。
篠笛などの鳴り物も交えた編曲と奏法、奏者同士の“あいだ”で行き交う動作、なかには西洋的な“ノリ”や高揚感も加味した演目に目を見張り、自然と体が揺れる。従来、和太鼓は土地土地の祭りで披露される素朴な郷土芸能という印象だったが、まるで舞台芸術のようなエンターテインメントとして目に焼き付いた「太悳」との出会い。
山形で生まれ、20周年を迎えた「太悳」は、創設者である川口幾太郎さんを中心に、和太鼓の迫力に魅せられた若者たちが継いできた和太鼓演奏研究会。
演奏を単なる「できる・できない」という結果だけに捉われるのではなく、リズムの中にある勢いや起伏、心地良さが、その演目の構想に合っているかという感覚的な良しあしを、日本ならではの精神性や運動学と照らし合わせているというのが興味深い。
和太鼓の持っている響き、音の違い、組み合わせによる美しさが、バチを通して身体の内的リズムと溶け合い、自然に手足が動くようなリズムへと転換されていく不思議な光景。心・技・体に意識を研ぎ澄ました彼らの姿からは、さながら舞踏家を思わせる気炎が漂う。