都市をデザインする(関係者)

ページ番号1012965  更新日 令和5年12月27日

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まちなかから創造を

やまがたクリエイティブシティセンター Q1

Q1外観の写真

馬場正尊さんの写真
株式会社Q1 代表取締役 馬場 正尊 氏
写真提供:株式会社Q1

―文化創造都市の拠点施設をどういう場所にしようと考えたのでしょうか。

 「山形市がユネスコ創造都市ネットワークに認定されたその決め手となったのは、映画はもちろん食文化や音楽やデザインといった創造都市の7分野が全てバランスよくそろっていたことが評価されたから」と佐藤市長はおっしゃっていました。一方で、そんなふうに世界が認めてくれるほどクリエイティブにあふれたまちなのに、あまりにも身近すぎるからか、山形市民は自分たちのまちがクリエイティブであることを意識できていない面もありました。ですから「ここに来れば山形のクリエイティブを体感できる、ここから山形らしいクリエイティブが生み出されていく」ような場所をつくろう、という方向性が生まれました。

―Q1のコンセプトを教えてください。

 ユネスコがうたう「クリエイティブ」とは、単に文化的であることにとどまりません。市民や企業、行政みんなが創造的な活動をすることによって新たな経済を生み出していく。そうした新しい経済を動かすエンジンとして位置付けられているのが「クリエイティブ」なのです。Q1のコンセプト「地域のクリエイティブと地域の産業を暮らしでつなぐ」は、そうした考えに基づいてできました。

 このコンセプトに共感しテナントとしてQ1に入ってくださった事業者は、それぞれが自分なりに考えて行動してくれていますし、高付加価値な商品やサービスを提供することを通して創造都市の理念を体現してくれています。

 また、イベントスペースを利用してくださっている市民の皆さんも、こちらが想像もしていなかったようなユニークな空間の使い方をされていて「あ、このコンセプトに共感する人たちが集まっているんだなぁ」という印象を受けています。

―建物のデザインのポイントを教えてください。

 ここはもともと山形市立第一小学校の旧校舎でした。築100年近くにもなる建物で、たくさんの人の思い出や記憶が詰まっていますから、建物自体の文脈や空気感をできるだけ残すべきだと思いました。ですので、建物の「素」の状態をそのまま生かしている、というのがデザインのポイントと言えるでしょう。実際にこの校舎で学んだ卒業生の方たちから「Q1に来て、懐かしさを感じた」とおっしゃっていただくことも多いので、当時の面影を残すことができて良かった、と思います。

―今後、Q1でやってみたいことを教えてください。

 これから大切なことは、子どもたちが自分のまちの未来を考えたりデザインしたりする、という経験ではないでしょうか。例えば、市内の小中高生と一緒に山形市の未来をデザインするようなワークショップを開いてみたいですし、Q1のテナントの皆さんが提供している付加価値の高い商品やサービス、デザインに子どもたちにはもっともっと触れてもらいたいです。幼いうちから自然と染み込むようにクリエイティブを体感していること、それ自体がすでに教育だと思います。きっとコパルで育った子どもたちはデザインセンスも自然と良くなっていくはずですよね。ですから、ぜひ、このQ1にもっともっとたくさんの子どもたちに来てもらって「何か」を感じ取ってもらえたらな、と思います。

みんなを包み込む空間

シェルターインクルーシブプレイス コパル

シェルターインクルーシブプレイス コパルの外観の写真

色部正俊さんの写真
シェルターインクルーシブプレイス コパル 館長 色部 正俊 氏

―「インクルーシブ」を体現するために工夫していることを教えてください。

 「目の前の~さん・隣の~くん・近くにいる~ちゃんのことを理解しようと努める」ことが原点です。「コパル」には、個々の子(コ)を尊重しながら仲間づくり(パル)をしていこう、という願いが込められています。「性別・年齢・国籍・障がいの有無を超えて、全ての人にとって心地良い居場所をつくる」というインクルーシブの理念を実現するには、個に寄り添うことが全ての始まりです。さまざまな立場や背景を持つお子さんの笑顔を思い浮かべながら議論を重ね、建築やイベントという「カタチ」、おもてなしという「ココロ」でチームの思いを体現できるように努めています。

 「コパルに来ると心の角がとれますね」「どんな観光名所よりまずはここに来るといい」「何よりスタッフの対応がインクルーシブそのものですね」など、来館者からとてもありがたいお言葉をいただきました。全国でも極めて事例の少ない「インクルーシブプレイス」の魅力をコパルから発信していきます。

―コパルのテーマの一つである「生きる力」について教えてください。

 「生きる力」の中でも、特に「考える力」を育みたいと考えています。野山で遊ぶ時には、危険を回避したり、遊び方を考えたり、仲間とルールを相談したりと、無意識のうちにさまざまなことを考えながら楽しむでしょう。まさにコパルは、「自然の中で遊びを創造する場」を提供しています。ですから、エリアごとの年齢制限もなく、禁止事項の貼り紙も最低限にしてあります。自分と違う立場や背景を持つお友達がいる前提で互いを認め合い、遊びのルールを考えていく。大人が決め過ぎないことも、「生きる力」を育むためには必要なことだと思っています。

―コパルのテーマの一つである「地域共生」について教えてください。

 「アテンダント」「市民ワークショップ」が地域共生の柱です。「アテンダント」というボランティア制度があり、18歳~80歳の45人が、見守り、清掃、読み聞かせなどのサポートをしてくださっています。

 「市民ワークショップ」では、子どもや親子を対象としたワークショップや講座を企画、開催してくださる個人、企業、団体を募集しました。スポーツ・音楽・医療・介護・福祉・食育・エンターテインメントなど、幅広いジャンルの方から応募があり、地域の皆さんと共に活気ある場づくりを実現しています。

―今後やってみたいことを教えてください。

 日本の未来を担う子どもたちに、一人でも多く「インクルーシブ」を伝えていきたいです。コパル内だけをインクルーシブ特別エリアと捉えるのではなく、「コパルから地域に、全国に、さらには世界に…」と発信します。

 これまで国内外から約29万人(海外22カ国)の来館者、1300件を超える視察(42都道府県)など、多くの方々よりお越しいただき心より感謝申し上げます。これからも、インクルーシブな設計、建築、そしてインクルーシブな運営、維持管理をご体感いただき、皆さんと共に魅力的な「インクルーシブプレイスづくり」を推進していきたいと思います。

 新年は1月2日から開館いたします。皆さんのお越しを心よりお待ちしております。

居心地が良い場所

市立図書館中央分館 中央公民館

市立図書館中央分館の写真

井上貴詞さんの写真
株式会社 井上貴詞建築設計事務所 代表取締役 井上 貴詞 氏

―リノベーションのポイントを教えてください。

 これまで灰色のタイルだった床を濃藍色のカーペットに変えているのですが、この濃藍色というのは夜明け前や日没後の空の色で、人の心をリラックスさせてくれます。また、橙や黄色に近い木製家具の補色となることで家具の存在がより目立つようになり、木質感にあふれた図書館という雰囲気を効果的につくりだしています。硬いタイルから柔らかいカーペットへと材質の質感の変化により、無機質な施設感が消えて、居心地の良い空間という印象が生まれました。このように、コストを抑えながら、色や素材を工夫するだけで、空間の印象を一変したこと。それが大きなポイントです。

―他に留意したところはどのようなことですか。

 「自然が身近にある」という山形市の良さを感じられるような工夫です。この場所が4、5階という高層階にあるという利点を生かし、窓辺を有効活用してカウンターを作りました。これによって勉強や読書などをしているときでも、ふと顔を上げれば窓から山々が見えるようになりました。山形の身近な自然の美しさや移ろいに気付く場にもなればと思います。

―本を読むだけでなくさまざまな使い方ができそうな印象を受けます。

 勉強や読書に集中できる静かなスペースもあれば、話しながらくつろげるスペース、子どもに読み聞かせができるスペースなど、いろんな人が思い思いの過ごし方ができる空間を目指しました。勉強する場合でも、一人で机に向かって集中できたり、グループワークやディスカッションができたりと、多様化している学習形態に対応できるようバリエーションを設けました。多様な人の居場所になるようにと考えています。

窓際のカウンターテーブルの写真

―1階のブックポストにキャラクターを描いた意図はなんでしょうか。

 一般的に図書館というのは本を借りに行ったり、読みに行ったり、自分から出向く場所ですが、もっと本自体が人に寄り添ってくるような関係性を表現できないだろうかと考えました。そこで本をモチーフにしたキャラクターを作り、館内各所に登場することで、キャラクターの方から歩み寄ってくるような親近感を感じてもらおうと考えました。「あれ、なんだろう?」と見つけてもらい、物語を想像してもらえたらうれしいですね。

―実際に完成後の利用者の様子を見て、どう思いましたか。

 非常に多くの方々に利用していただくようになり、想像以上の効果が出ていると感じます。学校帰りに立ち寄って勉強している高校生、パソコンを広げる大学生や社会人、飲み物や食べ物を持って来て遊ぶ小学生など、いろんな人が自分の目的に合わせた利用の仕方をしてくれています。この新しい印象をまとった中央公民館と図書館がこれからますます大勢の人の居場所となってくれるのを楽しみにしています。

歩いて楽しい商店街に

大手門通りすずらん商店街

すずらん通りパークレットの写真
写真提供:株式会社オブザボックス
船山隆幸さんの写真
大手門通り すずらん商店街振興組合 理事長 船山 隆幸 氏

―歩行者天国など道路を活用した取り組みを始めたきっかけを教えてください。

 商店街というのは従来は買い物をメインに消費する場所だったわけですが、今では小売店は激減し、夜の飲食店が多くなっていて時間消費にシフトしています。これは全国的な流れで、私たち大手門通りすずらん商店街も状況は同じ。日中はシャッター通りだと思われることもあります。そんな中、山形市が掲げている「歩くほど幸せになるまち」というビジョンに沿った形で「商店街を歩くといろんな発見があって面白いよ」という提案をしていこうと考えました。

―具体的にどういう取り組みを行ったのでしょうか。

 「すずらんナイト」と題し、車道を歩行者天国にする取り組みを行っています。これまでに、東北芸術工科大学が主催する「山形ビエンナーレ」の会場として活用してもらったり、モンテディオ山形のパブリックビューイングなどを行ったり、たくさんの人に来ていただきました。

―どのような効果があったのでしょうか。

 まず、商店街に興味を持った若い方が現れるようになりました。例えば、東北芸術工科大学の学生や卒業生が「自分で製作したストリートファーニチャーを商店街に置いてほしい」と声を掛けてくれて、パークレットのサインをデザインしてくれたり、歩道の空間をデザインしてくれたり。そんな彼らの登場によってとても心地良い空間が生まれたことで、観光客が座って地図を開いたり、お年寄りが休憩したり、ゆっくりと世間話をすることができたりと、これまでただ通り過ぎるだけだった商店街に目を向けて、足を止めてくださる方が多くなりました。
 また、「すずらんナイトでこんなことをやってみたい」という提案をいただくことも多くなり、商店街に関わってくれる人がどんどん増えてきていると実感しています。

―今後どういう商店街にしていきたいですか。

 商店街は、情報を得る場所でもあると思います。例えば、地元の人がお薦めするお店を知りたい観光客の方もいますよね。パークレットやストリートファーニチャーなどの滞在できる空間があることで、お客さんとのコミュニケーションの距離が近い場所にしていけたらと考えています。
 また、商店街に関わりを持って一緒にチャレンジしていくという空気感が広がっていけば、これまで商店街になかなか来なかった人たちが足を運んでくれるかもしれませんし、ここにお店を出したいという人が増えてくるかもしれません。「山形市を元気にしたい」という前向きな思いと豊かなアイデアを持つ人たちが集まってくるような商店街になっていくといいな、と思っています。

パークレットのピアノを弾いているイラストパネルの写真
写真提供:株式会社オブザボックス

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